結論:加入と扶養の判断は別々の基準で、勤務先の形態でも分かれる
確認日は2026-10-17です。厚生労働省・協会けんぽ・e-Govの原文で確かめられたことは次の6点です。
- 短時間労働者の社会保険(健康保険・厚生年金)の加入要件は、厚生労働省の適用拡大Q&Aによると、週の所定労働時間が20時間以上、学生でないこと、2か月を超える雇用の見込みがあること、そして勤務先の規模が要件を満たすことです。
- 勤務先の規模は、同Q&Aで「2027年10月からは常時36~50人の従業員を使用する事業所(現在は51人以上の事業所)」と書かれています。
- 賃金要件(所定内賃金の月額8.8万円以上)は、令和7年年金制度改正により2026年10月に撤廃されました。同Q&Aは「年収約106万円を気にする必要はありません」と書いています。
- 配偶者などの健康保険の被扶養者になれるかは、別の収入基準で決まります。協会けんぽは、年間収入130万円未満を原則の基準としています。
- 健康保険法第3条第3項第1号が定める適用事業所(常時5人以上の従業員を使用する事業所)の事業の列挙に、美容・理容の語はありません。法人の事業所は同項第2号で、常時従業員を使用するものが対象です。
- 個人事業所の適用範囲は、令和7年の年金制度改正で変わります。令和11年10月以降は原則として全業種の事業所が対象で、同時点で既に開業している従来非適用の業種の常時5人以上の個人事業所は、当分の間対象外です。
病気で休むときの給付は美容師の傷病手当金(健康保険)、雇用保険の加入条件はパート・アルバイトの美容師の雇用保険の加入条件で整理しています。自分が加入対象かどうかは、このページでは判断しません。
短時間で働く人の社会保険の加入要件(厚生労働省 適用拡大Q&A)
| 項目 | 厚生労働省の記載 |
|---|---|
| 週の所定労働時間 | 20時間以上。所定労働時間は就業規則や雇用契約書等で判断する。月単位で定まっているときは1か月の所定労働時間を52/12で割って判断する |
| 実際の労働時間が長いとき | 所定労働時間が週20時間未満でも、実際の労働時間が2か月連続で週20時間以上となり、その後も続くと見込まれるときは、3か月目から加入対象 |
| 学生でないこと | 主に高等学校の生徒、大学・短期大学の学生、専修学校に在学する生徒等が「学生」。卒業後も引き続き同じ適用事業所に使用されることになっている人、休学中の人、定時制・通信制課程に在学する人等は、学生でも対象 |
| 雇用の見込み | 2か月を超える雇用の見込みが必要。契約期間が2か月以内でも、更新が予定されている、または同条件で雇われた人が更新された実績があるなど、2か月を超える見込みがあれば対象 |
| 勤務先の規模 | 2027年10月から常時36~50人の事業所に拡大(現在は51人以上)。令和7年の年金制度改正で、企業規模の要件は10年をかけて段階的に縮小・撤廃される |
| 賃金要件(月額8.8万円以上) | 2026年10月に撤廃。年収約106万円を気にする必要はない |
健康保険法第3条第1項ただし書は、一週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満の短時間労働者のうち、一週間の所定労働時間が20時間未満である人または学生等を、被保険者となることができない人として挙げています。上の要件との関係の当てはめ(自分の勤務先がどの区分に当たるか)は、このページでは判断しません。
被扶養者になれる収入の基準(協会けんぽの記載)
| 認定を受ける人 | 年間収入の基準 | 協会けんぽの記載 |
|---|---|---|
| 原則 | 130万円未満 | 同居の場合は被保険者の年間収入の2分の1未満、別居の場合は被保険者からの仕送り額未満 |
| 60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度の障害者 | 180万円未満 | 同上 |
| 19歳以上23歳未満(被保険者の配偶者を除く) | 150万円未満 | 令和7年度税制改正を踏まえた変更。扶養認定日が令和7年10月1日以降の人が対象で、認定日が属する年の12月31日時点の年齢で判定する予定 |
- 協会けんぽは、被扶養者の要件として、日本国内に住所があること、被保険者に主として生計を維持されていること、収入要件と同一世帯の条件を満たすことを挙げています。
- 自営業の人の年収は、年間総収入から必要経費(社会通念上、その所得を得るために必要なことが明らかな経費)を差し引いた額です。
- 人手不足による労働時間延長等で一時的に年収が基準を超えても、事業主の証明を添付すれば、原則として連続2回まで被扶養者の認定が可能です。
- 年間収入が基準額以上でも、労働契約で定められた賃金から見込まれる額が基準額未満で、ほかに収入が見込まれず、世帯の条件(上の表の右列)を満たすときは、原則として認定が可能です。労働時間が不明確な場合や契約期間が1年に満たない場合は認定できません。
収入要件は、加入している健康保険の保険者が最終的に判断します。年収が継続的に基準を超える見込みの場合の扱いと、各種手当・交通費・年金収入が収入に含まれるかは、このページでは確認していません。
月の労働時間と時給に置き換えた計算例(例示)
上の2つの基準を、月の労働時間と時給に置き換えた算数の例です。基準の数字は厚生労働省・協会けんぽの記載(確認日: 2026-10-17)で、時給や時間は例として置いた数字です。自分が加入対象か、被扶養者になれるかは、このページでは判断しません。
| 例 | 計算 | 基準との位置 |
|---|---|---|
| 月の所定労働時間が80時間 | 80 ÷ (52/12) = 約18.5時間(週) | 週20時間未満。この要件では加入対象にならない側 |
| 月の所定労働時間が90時間 | 90 ÷ (52/12) = 約20.8時間(週) | 週20時間以上。この要件を満たす側(学生でないこと、2か月を超える雇用の見込み、勤務先の規模の要件は別に必要) |
| 時給1,200円・週20時間・年52週 | 1,200 × 20 × 52 = 1,248,000円 | 年間収入130万円未満の側(収入の範囲は保険者が判断) |
| 時給1,300円・週20時間・年52週 | 1,300 × 20 × 52 = 1,352,000円 | 年間収入130万円以上の側 |
- 週の時間への換算は、同Q&Aが示す「1か月の所定労働時間を52/12で割る」方法です。実際の労働時間ではなく、就業規則や雇用契約書等で定まる所定労働時間で見ます。
- 加入の判断(週20時間など)と、扶養の判断(年間収入130万円など)は別の基準です。賃金要件の撤廃後は、加入の判断に年収106万円の基準は使いません。
- 扶養の年間収入に交通費や各種手当が含まれるかは、このページでは確認していません。加入している健康保険の保険者に確かめてください。
勤務先は適用事業所か(個人事業所の扱い)
- 健康保険法第3条第3項第1号は、物の製造、土木、運送、物の販売、金融、教育、医療などを列挙した事業の事業所で、常時5人以上の従業員を使用するものを適用事業所としています。この列挙に「美容」「理容」の語はありません。
- 同項第2号は、国、地方公共団体または法人の事業所で、常時従業員を使用するものも適用事業所としています。
- 厚生労働省は、令和11年10月以降は原則として全業種の事業所が被用者保険の適用対象になったと書いています。ただし、令和11年10月時点で既に開業している、従来非適用であった業種の常時5人以上の個人事業所は、経営への影響に配慮し、当分の間、適用対象としません。
勤務先が適用事業所かどうかは、保険証(資格確認の書類)、給与明細の保険料の控除、勤務先への確認で確かめられます。
確認できたことと、できていないこと
| 論点 | 状態 | 根拠 |
|---|---|---|
| 短時間労働者の加入要件(週20時間・学生でない・2か月超)と賃金要件の撤廃 | 確認できた(2026-10-17) | 厚生労働省 適用拡大Q&A |
| 勤務先の規模(現在51人以上、2027年10月から36~50人) | 確認できた(2026-10-17) | 厚生労働省 適用拡大Q&A |
| 協会けんぽの被扶養者の収入基準(130万円・150万円・180万円) | 確認できた(2026-10-17) | 協会けんぽ「被扶養者資格の再確認についてのよくあるご質問」、大阪支部のお知らせ |
| 一時的な収入増の特例、労働契約に基づく特例 | 確認できた(2026-10-17) | 協会けんぽ「被扶養者の認定における特例について」 |
| 個人事業所の適用範囲の変更(令和11年10月) | 確認できた(2026-10-17) | 厚生労働省「令和7年度年金制度改正法が公布されました」 |
| 健康保険組合・共済組合の被扶養者の収入基準 | 未確認 | 協会けんぽの基準のみ確認 |
| 勤務先の個別の適用事業所の該当性、自分の加入対象かどうか | 判断しない | 事業所の形態・人数・労働条件による。年金事務所等への確認が必要 |
| 美容業に限った扶養・社会保険の公式の記述 | 未確認 | 確認した資料に美容業を名指しした記載は見当たらない |
参照した公式資料
- 厚生労働省「適用拡大 Q&A」(社会保険適用拡大特設サイト)
- 厚生労働省「令和7年度年金制度改正法が6月20日に公布されました」
- 全国健康保険協会「被扶養者資格の再確認についてのよくあるご質問」
- 全国健康保険協会「被扶養者の認定における特例について」
- 全国健康保険協会 大阪支部「19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります」
- e-Gov法令検索「健康保険法」(第3条)
確認日2026-10-17。収入基準や適用拡大の規模要件は改正されることがあるため、手続きの前に加入している保険者や年金事務所で確かめてください。
関連ページ
- 美容師の傷病手当金(健康保険):健康保険の被保険者が病気で休むとき
- 独立する美容師の国民年金・国民健康保険:面貸し・個人事業の人の保険の入り方
- 面貸し・業務委託の美容師の労働者性:労働者に当たるかの考え方
- パート・アルバイトの美容師の雇用保険の加入条件:雇用保険の側の条件
- 従業員を雇う美容所の源泉徴収・年末調整の基本:給与から引く源泉所得税と年末調整(事業主側の手続き)
よくある質問
パートの美容師は、いまも年収106万円を超えないように働く必要がありますか?
厚生労働省の適用拡大Q&Aは、社会保険の加入要件だった賃金要件(所定内賃金の月額8.8万円以上)が令和7年年金制度改正により2026年10月に撤廃されたため、年収約106万円を気にする必要はないと書いています。ただし、被扶養者の収入基準(協会けんぽでは原則130万円未満)は別の制度です。
配偶者の健康保険の被扶養者になれる年収はいくらですか?
協会けんぽは、年間収入130万円未満(60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者は180万円未満、19歳以上23歳未満で被保険者の配偶者でない人は150万円未満)で、同居なら被保険者の年間収入の2分の1未満などを要件としています。健康保険組合の基準は確認していません。
個人経営の美容室で働くパートは、厚生年金に入れますか?
健康保険法第3条第3項第1号の事業の列挙に美容・理容の語はありません。厚生労働省は、令和11年10月以降は原則として全業種の事業所が適用対象になるとし、同時点で既に開業している従来非適用の業種の常時5人以上の個人事業所は当分の間対象にしないと書いています。個別の事業所の当てはめは判断しません。