勤務美容師の違反が、店の閉鎖命令につながる場合がある

美容所で働く美容師が衛生上の決まりに違反すると、本人の業務停止だけでなく、美容所そのものの閉鎖を命じられることがあります。「閉鎖命令」とは、都道府県知事が期間を決めて、その美容所を使えなくする処分のことです。このページでは、閉鎖命令と、その前提になる立入検査を、美容師法の原文で整理します。

場面誰が対象か根拠
立入検査(都道府県の職員が美容所に入り、衛生措置の実施状況を検査する)美容所(開設者と、そこで働く美容師)第14条
美容所の閉鎖命令美容所の開設者第15条
美容師個人の業務停止美容師第10条第2項
検査の拒否・閉鎖処分違反への罰金拒んだ人・違反した人第18条

美容師個人の衛生措置の中身は美容師の器具の消毒方法、美容所の開設者に課される措置は美容所の開設の届出・構造設備の確認・管理美容師に、それぞれまとめています。

立入検査で見られるのは、第8条と第13条の措置の実施状況(第14条)

第14条第1項は、都道府県知事が職員に美容所へ立ち入らせ、検査させることができると定めています。

第十四条 都道府県知事は、必要があると認めるときは、当該職員に、美容所に立ち入り、第八条又は前条の規定による措置の実施の状況を検査させることができる。

検査の対象は2つの措置です。どちらも、日々の営業のなかで守る内容です。

条文措置をとる人内容
第8条美容師皮ふに接する布片と器具を清潔に保つ。布片は客一人ごとに取り替え、器具は客一人ごとに消毒する。そのほか、都道府県が条例で定める衛生上必要な措置
第13条美容所の開設者美容所を常に清潔に保つ。消毒設備を設ける。採光・照明・換気を充分にする。そのほか、都道府県が条例で定める衛生上必要な措置

第14条第2項は、立入検査について、指定試験機関への検査の規定(第4条の13の第2項と第3項)を準用しています。その中身は次の2点です。

つまり、検査に来た職員には、身分証明書の提示を求められます。検査は衛生措置の確認のための権限で、捜査のためのものではない、と条文に書かれています。

閉鎖を命じられるのは、開設者側の4つの場合(第15条第1項・第2項)

第15条第1項は、閉鎖命令の対象を美容所の開設者とし、次の場合に期間を定めて閉鎖を命じられるとしています。

順番閉鎖を命じられる場合
1開設者が、管理美容師を置く義務(第12条の3)に違反したとき
2開設者が、美容所について講ずべき措置(第13条)に違反したとき
3美容師でない人に、その美容所で美容の業を行わせたとき
4第10条第2項の業務停止処分を受けている人に、その美容所で美容の業を行わせたとき

3つ目と4つ目は、免許を持たない人や、業務停止中の美容師を働かせた場合です。働いた本人の責任とは別に、開設者が閉鎖の対象になります。無免許の人が美容を業としたときの罰則は罰則の対応表、業務停止処分の内容は美容師の業務停止・免許取消の基準で扱っています。

勤務美容師にとって大事なのは第2項です。

2 当該美容所において美容の業を行う美容師が第八条の規定に違反したときも、前項と同様とする。ただし、当該美容所の開設者が美容師の当該違反行為を防止するために相当の注意及び監督を尽したときは、この限りでない。

つまり、美容所で働く美容師が第8条の措置(布片の取り替え、器具の消毒など)を守らなかった場合も、開設者に閉鎖命令が出ることがあります。ただし、開設者が違反を防ぐために「相当の注意及び監督を尽した」ときは、閉鎖を命じられません。

「相当の注意及び監督」が具体的に何を指すかは、条文には書かれていません。このサイトの一次資料では、その基準を示す通知や処分基準を確認できていないため、書きません。

勤務美容師本人に及ぶ処分と罰金(第10条第2項・第18条)

閉鎖命令は開設者に出る処分ですが、同じ違反について美容師本人にも別の処分があります。第10条第2項は、美容師が第7条または第8条に違反したとき、または伝染性の疾病にかかり就業が公衆衛生上不適当と認められるときに、都道府県知事が期間を定めて業務を停止できるとしています。

罰金は第18条が定めていて、このページに関係するのは次の2つです。罰金の上限はどちらも30万円です。

第18条の号罰金の対象になる行為上限
第4号第14条第1項の職員の検査を、拒む・妨げる・忌避する30万円以下
第5号第15条の美容所の閉鎖処分に違反する30万円以下

同じ条文の第1号は、免許なしで美容を業とすること(第6条違反)も同じ上限の罰金としています。罰則の全体は罰則の対応表で比べられます。

勤務美容師が押さえておくこと

国の衛生管理要領の改正点は理容所・美容所の衛生管理要領、ほかの条文の位置づけは条文別早見表で確認できます。

一次情報: 美容師法(昭和32年法律第163号)第4条の13・第8条・第10条・第12条の3・第13条・第14条・第15条・第18条(e-Gov法令検索、2026-10-04取得)。条文の引用は原文のとおりです。