美容所を開く前に、法律が求める3つのこと
美容師免許を持つ人が自分の店を持つとき、法律上の流れは次の3つに分かれます。「美容所」とは、美容を業として行うための場所のことです。
| 順番 | やること | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 開設の前に、美容所の位置・構造設備・従業者などを都道府県知事へ届け出る | 美容師法第11条第1項、施行規則第19条 |
| 2 | 構造設備の検査を受け、衛生上の措置に適すると確認されてから使い始める | 美容師法第12条 |
| 3 | 美容師が常時2人以上の店では、管理美容師を置く | 美容師法第12条の3 |
美容師免許そのものの要件は美容師免許の欠格事由、免許が無いまま美容を業とした場合の罰則は罰則の対応表にまとめています。このページは、その先の「店を開く手続き」に絞っています。
開設の前に届け出る(第11条・施行規則第19条)
美容師法第11条第1項は、美容所を開設しようとする者に、あらかじめの届出を義務づけています。
第十一条 美容所を開設しようとする者は、厚生労働省令の定めるところにより、美容所の位置、構造設備、第十二条の三第一項に規定する管理美容師その他の従業者の氏名その他必要な事項をあらかじめ都道府県知事に届け出なければならない。
届出書に書く事項は、施行規則第19条第1項が9つ挙げています。
| 号 | 届出書の記載事項 |
|---|---|
| 1 | 美容所の名称と所在地 |
| 2 | 開設者の氏名と住所(法人は、名称・所在地・代表者の氏名) |
| 3 | 管理美容師を置く美容所では、管理美容師の氏名と住所 |
| 4 | 美容所の構造と設備の概要 |
| 5 | 美容師の氏名と登録番号、その他の従業者の氏名 |
| 6 | 美容師に結核・皮膚疾患などの指定された伝染性疾病がある場合は、その旨 |
| 7 | 開設予定年月日 |
| 8 | 同じ場所に理容所がすでにある場合は、その理容所の名称 |
| 9 | 同じ場所について理容師法第11条第1項の届出がされている場合は、その理容所の開設予定年月日 |
提出先は、美容所の所在地の都道府県知事、保健所を設置する市の市長、または特別区の区長です。届出書に添える書類は次のとおりです。
- 美容師の伝染性疾病の有無についての医師の診断書(第2項)
- 管理美容師を置く美容所では、その管理美容師が法律の要件を満たすことを示す書類(第3項)
- 届出をするのが外国人の場合は、国籍等を記載した住民票の写し(第4項)
届出書や図面の細かな様式、添付する図面の種類、手数料の有無は、窓口になる自治体ごとに違います。このサイトでは確認できていないため、書かずに、各自治体の案内を見る前提にしています。
構造設備の検査と確認を受けてから使う(第12条・第13条)
届出をしただけでは、美容所を使い始められません。第12条は、検査と確認を受けるまで使用してはならないと定めています。
第十二条 美容所の開設者は、その美容所の構造設備について都道府県知事の検査を受け、その構造設備が第十三条の措置を講ずるに適する旨の確認を受けた後でなければ、当該美容所を使用してはならない。
「第十三条の措置」とは、開設者が美容所について講じなければならない次の4つです。
| 号 | 第13条が求める措置 |
|---|---|
| 1 | 常に清潔に保つこと |
| 2 | 消毒設備を設けること |
| 3 | 採光、照明及び換気を充分にすること |
| 4 | その他都道府県が条例で定める衛生上必要な措置 |
第3号の「充分」の基準は、施行規則第27条が数字で定めています。
- 採光・照明: 美容師が美容のための直接の作業を行う場合の作業面の照度を100ルクス以上にする
- 換気: 美容所内の空気1リットル中の炭酸ガスの量を5立方センチメートル以下に保つ
床の材質や洗い場の仕様のような、より細かい構造設備の基準は、第4号のとおり都道府県の条例(保健所設置市や特別区では、その自治体の定め)に委ねられています。国の法令の条文には書かれていないため、店を開く地域の保健所で確認が必要です。
管理美容師を置く条件と、なれる人(第12条の3)
美容師が常時2人以上いる美容所では、衛生管理の責任者として「管理美容師」を置く必要があります。
第十二条の三 美容師である従業者の数が常時二人以上である美容所の開設者は、当該美容所(当該美容所における美容の業務を含む。)を衛生的に管理させるため、美容所ごとに、管理者(以下「管理美容師」という。)を置かなければならない。ただし、美容所の開設者が第二項の規定により管理美容師となることができる者であるときは、その者が自ら主として管理する一の美容所について管理美容師となることを妨げない。
つまり、開設者自身が管理美容師の要件を満たすなら、自分が主として管理する1つの美容所については、自分が管理美容師になれます。
管理美容師になれる人は、同条第2項が2つの条件で定めています。
2 管理美容師は、美容師の免許を受けた後三年以上美容の業務に従事し、かつ、厚生労働大臣の定める基準に従い都道府県知事が指定した講習会の課程を修了した者でなければならない。
講習会の基準は、施行規則第23条が定めています。教える人は医師・歯科医師・薬剤師・獣医師のいずれか、またはこれらと同等の知識と経験があると認められる人で、終了時に試験などで修了を認定し、修了証書を交付することも求められています。科目と時間数は同条の表にあり、このページでは扱っていません。
理容所と同じ場所に美容所を開く場合の取り扱いは、届出事項の第8号・第9号に出てくるにとどまり、管理美容師の兼任の可否は、このページの一次資料では確認できていません。
開設したあとに必要な届出(第11条第2項・施行規則第20条〜第22条の2)
開設後に届出事項が変わったとき、または美容所をやめたときは、「すみやかに」都道府県知事へ届け出る必要があります(第11条第2項)。日数の指定は条文にありません。
- 変更の届出(施行規則第20条): 美容師を新しく使う場合や、指定された伝染性疾病に関する事項が変わる場合は、その人の医師の診断書を添付する。管理美容師を置く、または替える場合は、新しい管理美容師が要件を満たすことを示す書類を添付する
- 開設者の地位の承継(施行規則第21条〜第22条の2): 相続、合併、分割のそれぞれで届出書の記載事項と添付書類が決まっている。相続では戸籍謄本または法定相続情報一覧図の写し、合併・分割では登記事項証明書が必要
実務上のポイント
- 届出は開設の前、使い始めるのは構造設備の確認の後、という順番が条文で決まっています。工事を先に進める場合も、届出と検査の時期は窓口に確認してください。
- 美容師が常時2人以上になる店は、開設時から管理美容師が必要です。免許取得後3年以上の実務経験と、指定講習会の修了が要件です。
- 構造設備の細かな基準・必要書類・様式は自治体ごとに違います。国の法令で確認できるのは、このページに書いた範囲です。
- 個別の店が基準を満たすかどうかは、このサイトでは判断しません。所在地の保健所にご確認ください。
出張・訪問のように美容所以外で業務を行える場合は出張・訪問美容が認められる条件、開いたあとの衛生管理は理容所・美容所の衛生管理要領、ほかの条文の位置づけは条文別早見表で確認できます。
一次情報: 美容師法(昭和32年法律第163号)第11条・第12条・第12条の3・第13条(e-Gov法令検索、2026-10-03取得)、美容師法施行規則(平成10年厚生省令第7号)第19条〜第23条・第27条(e-Gov法令検索、2026-10-03取得)。条文の引用は原文のとおりです。