原則:理容・美容は理容所・美容所で行う
理容師法・美容師法では、理容・美容の施術は原則として理容所・美容所で行うこととされています。出張理容・出張美容が認められるのは、政令(理容師法施行令第4条第1号・美容師法施行令第4条第1号)で定める例外的な場合に限られます。この対象範囲について、厚生労働省は令和8年3月26日にQ&Aを改定しました。
対象となりうる状況(Q&A原文に基づく整理)
「要介護状態にある等」に該当しうる例として、Q&Aは次を挙げています。
- 入所施設にいる場合
- 疾病・障害等のため、理容所・美容所において施術を完了することが困難な者
- 外出困難な妊婦
- 精神的・心理的理由等により外出が困難な者(ひきこもり等)
- 常時対応が求められる等の業務・勤務環境で、理容所・美容所の営業時間中に外出する時間の確保が困難な場合
- 【令和8年3月26日改正で追加】自宅等で常時、家族である乳幼児の育児又は重度の要介護状態にある高齢者等の介護を行っている者であって、他の家族の援助や行政サービスの利用が困難であり、育児・介護を受けている家族を残して理容所・美容所に行くと当該家族の安全確保が困難になると認められる者
家族の育児・介護を理由とする対象の考え方(令和8年3月26日改定Q&Aで明確化)
上記の【令和8年3月26日改正で追加】区分について、同日改定のQ&Aでは次のような考え方が示されています。
- 「自宅等」には、自宅以外でも生活の本拠であると認められる場所を含む。
- 仕事をしながら育児・介護を行っている場合でも、外出する時間の確保が困難であれば対象となり得る。
- 一般に、乳幼児の育児や高齢者の介護を担う同居の家族は「家族」に該当する。
- 「乳幼児」について、保育園・幼稚園の年長児は発達状況に応じて判断する。ただし幼稚園の就園児は通常、登園中に理容所・美容所に来ることが可能と考えられる。小学生は一般に対象外だが、重度の障害等により「重度の要介護状態にある高齢者等」に該当する場合は対象となり得る。
- 「重度の要介護状態」は介護保険制度の要介護認定を受けている場合に限定されない。「当該家族の安全性を確保することが困難」かどうかも考慮して判断される。
- 訪問介護サービス等を契約すれば利用できる状態にあっても、利用可能なサービスの有無や経済的な事情等を含め、個別具体的に「利用することが困難」かどうかが判断される。
- 「安全性を確保することが困難」とは、育児・介護を受けている乳幼児・高齢者等を一人で残した場合に、その生命・身体の安全性を確保することが困難となる場合を想定している。心身の状態が安定しており数時間であれば一人で過ごせる場合は、これに当たらない。
- この区分に基づいて出張理容・出張美容を行う場合でも、衛生管理要領が定める「施術中の客及び介助者以外の者をみだりに出入りさせないこと」という趣旨から、育児・介護の対象者(乳幼児・高齢者等)を施術室に出入りさせることは原則として適切ではない。ただし、柵付きベッド等により対象者が施術室内で安全に留まれる措置が講じられている場合は、この限りではない。
婚礼・儀式・出演の直前も対象(政令第4条第2号)
要介護状態等の理由(政令第4条第1号)とは別に、政令第4条第2号は「婚礼その他の儀式に参列する者に対してその儀式の直前に美容を行う場合」を、美容所以外での施術が認められる独立した例外として定めています。令和8年3月26日の通知改正では、この第2号の該当例として「演劇、演芸、テレビに出演する者等に対して、その出演の直前に施術を行うことが必要と認められるもの」も明記されました。つまり、結婚式などの儀式の直前だけでなく、舞台・演芸・テレビ出演の直前のヘアメイクも、この政令上の例外に含まれると整理されています。
判断基準は「状態の程度」と「生活環境」の総合勘案
出張理容・出張美容が認められるか否かについては、「その状態の程度」や「生活環境」を総合的に勘案し、個別具体的な事情に照らして判断されたい。
Q&Aは骨折を例に、次のような考え方を示しています。
- 片足骨折で松葉杖を使用でき、近距離のタクシーで理容所・美容所に来ることができる場合や、家族の運転で来ることができる場合は、出張理容・出張美容は認められないと考えられる。
- 両足骨折で自ら外出することが困難であり、家族の助けを借りても理容所・美容所に来ることが容易でない場合は、出張理容・出張美容が認められると考えられる(ただし家族の運転で来ることができ、それが困難でないと認められる場合は認められない)。
- 一般的に、骨折の状態であってもタクシー等で日常的に外出しており、行動範囲内に通常利用する理容所・美容所がある場合は、「来ることが困難」とは認められないと考えられる。
都道府県条例で定める場合(政令第4条第3号)の実例
政令第4条第3号は「前二号のほか、都道府県(保健所設置市又は特別区)が条例で定める場合」も出張理容・出張美容の対象になり得ると定めています。厚生労働省が令和8年3月26日に公表した157自治体への調査結果によると、条例・内規等で対象としている例には次のようなものがあります。
- 社会福祉施設(その他これらに類する施設)の入所者(141自治体)
- 演劇・演芸等に出演する者(出演直前)(91自治体)
- 刑事収容施設の被収容者・被留置者(58自治体)
- 付近に理美容所のないへき地(34自治体)
- 災害等の発生により避難所に避難している者(27自治体)
- 停泊中の船舶で上陸できない船員(20自治体)
- 障害者手帳の交付を受けている者、病院・診療所の入院患者等(自治体数は少数)
一部の自治体では、知事等が個別に特別な事情があると認めるときの内規等として、貧困・孤立で不安を抱える女性、ひきこもりの状態にある者、単発で営利目的ではないイベントでのヘアセットなどを対象にしている例もあります。ただし、これらは自治体ごとに条例・内規の内容が異なり、一般の物販店やイベント会場での任意の商用出店を一律に認める規定は確認できていません。実際の可否は営業地域の条例を個別に確認する必要があります。
衛生管理要領の令和8年3月26日改正(免許証携行・消毒参考通知の更新)
衛生管理要領の令和8年3月26日改正により、出張理容・出張美容を行う際には、理容師又は美容師であることを証明するもの(免許証の本証又は写し)を持参し、利用者等から求めがあった場合にはそれを提示することが定められました。
同日の改正ではもう1点、感染症・感染性の皮膚疾患の患者等を扱った際の器具等の消毒方法について参考とする通知も更新されています。従来の「平成16年1月30日健感発第0130001号」から、「感染症法に基づく消毒・滅菌の手引き(令和4年3月11日健感発第0311第8号厚生労働省健康局結核感染症課長通知)」に差し替えられました。こちらは主に営業者・衛生管理責任者向けの技術的な改正点です。
制度改正の年表
| 日付 | 通知 |
|---|---|
| 平成19年10月4日 | 出張理容・出張美容に関する衛生管理要領について |
| 平成25年12月25日 | 出張理容・出張美容に関する衛生管理の徹底について |
| 令和8年3月26日 | 衛生管理要領の一部改正 |
| 令和8年3月26日 | 出張理容・出張美容の対象等について(一部改正) |
| 令和8年3月26日 | 出張理容・出張美容に関する条例等の制定状況等について(情報提供) |
| 令和8年3月26日 | 出張理容・出張美容の対象等について(Q&A、改定) |
令和8年3月26日に4本の通知が同時に発出されており、対象範囲の見直しが行われた直後です。都道府県ごとの条例制定状況も別途情報提供されているため、営業地域の条例もあわせて確認する必要があります。
一次情報: 厚生労働省「理容・美容」ページ掲載の出張理容・出張美容関連通知および美容師法施行令第4条原文(原文PDF・法令原文を直接確認、確認日2026-09-13・2026-09-17)。詳細な出典URLはdocs/SOURCE_LEDGER.md参照。