結論:アートメイクは美容師法の「美容」ではなく、医師法上の「医行為」に該当する

まつげエクステンションは美容師法第2条にいう「美容」(パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により容姿を美しくすること)に該当するとされ、美容師免許で実施できます。これに対しアートメイクは、厚生労働省医政局長通知(令和7年8月15日 医政発0815第21号)で次のように整理されています。

なお、いわゆるアートメイクに関して、針先に色素を付けながら、皮膚の表面に墨等の色素を入れる行為のうち、施術箇所に本来存在しうる人体の構造物(眉毛、毛髪、乳輪・乳頭等)を描く行為及び化粧に代替しうる装飾(アイライン、チーク、リップ等)を描く行為は、医行為に該当するものである。

アートメイクは「皮膚に色素を入れる」施術であり、美容師法が定める「美容」(パーマ・結髪・化粧)とは性質が異なるため、美容師免許では実施できません。医師法第17条に規定する「医業」に該当し、医師免許を有しない者が業として行えば医師法違反となる行為として扱われています。

名称を変えても対象になる

同じ通知は、名称を変えても実質的にアートメイクに該当する施術であれば対象になることを明記しています。

そのため、例えば、「○○メイク」「○○タトゥー」といった「アートメイク」以外の名称で提供されていたとしても、かかる行為に該当するものは医行為に該当する。

また看護師等についても、医師の指示なくアートメイク等の医行為を行うことは、医師法第17条や保健師助産師看護師法第37条に違反するとされています。

「タトゥーは医行為ではない」最高裁決定との違い

アートメイクを巡っては、令和2年9月16日の最高裁判所決定(平成30年(あ)1790号 医師法違反被告事件)で、タトゥー施術行為は医行為でないと判示されたことがあります。この決定を踏まえ、厚生労働省医政局医事課長は令和5年7月3日付け通知(医政医発0703第5号)で、アートメイクとタトゥーの扱いの違いを次のように整理しました。

検討においては、当該決定におけるタトゥー施術行為が医行為でないと判示された根拠事情のうち、最も重要かつ本質的な点は、「タトゥーは、歴史的に、長年にわたり医師免許を有しない彫り師が行ってきた実情があることである」と示された上で、「すなわち、タトゥーの担い手は歴史的に医療の外に置かれてきたものであり、そのこと自体が、タトゥーの社会的な位置づけを示すものとして理解されうる」と示された。
また、アートメイクについては、医療の一環として医師・看護師等の医療従事者が関与している実態があり、「一定の侵襲性が認められることや、医療従事者による安全性水準の確保がきわめて重要と考えられること」から、医行為該当性が肯定できるものと考えられると示された。

つまり、「針で皮膚に色を入れる」という技術面が似ていても、タトゥーとアートメイクでは歴史的な担い手・医療との関わり方が異なるという理由で、法律上の扱いが分かれています。

具体例:眉毛・アイラインへの回答(福島県からの照会)

同じ通知には、福島県保健福祉部長から厚生労働省への照会と回答が別紙として添付されています。

[照会] 医師免許を有しない者が、針先に色素を付けながら皮膚の表面に墨等の色素を入れて、(1) 眉毛を描く行為 (2) アイラインを描く行為 を業として行った場合、医師法第17条違反と解してよろしいか伺います。
[回答] 御照会の行為は、医行為に該当し、医師免許を有さない者がこれを業として行うのであれば、医師法第17条に違反するものと思料する。

眉毛・アイラインという、美容室でも扱われやすい部位が名指しで確認されている点が、このサイトの読者(美容師免許保持者)にとって特に重要です。

美容所等での取り締まり強化の動き

厚生労働省は「美容所等におけるアートメイク施術について」という情報提供も公表しています(本文中に発出日の記載はありません)。

アートメイクの施術については、医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為であり、医師免許を有しない者が業として行えば医師法第17条に違反するものであることは既に示しているところです。そこで、違法事例等に適切に対処するべく、各都道府県衛生主管部宛て通知しましたのでお知らせします。なお、その名称を問わず、上記にいうアートメイクについては須らく医行為となるところ、特定の施術について厚生労働省が許可、容認した事実は一切ないことを申し添えます。

美容所(美容室)で行われるアートメイク施術が名指しで取り上げられ、違法事例への対処を都道府県に求める通知が改めて出されている状況です。

実務上のポイント

一次情報: 厚生労働省「美容医療に関する取扱いについて」(令和7年8月15日 医政発0815第21号)、「医師免許を有しない者によるいわゆるアートメイクの取扱いについて」(令和5年7月3日 医政医発0703第5号)、「美容所等におけるアートメイク施術について」(発出日記載なし)。原文をいずれも直接取得・確認(確認日2026-09-26)。詳細な出典URLはdocs/SOURCE_LEDGER.md参照。