免許証を返す・出す場面は3つあり、返す先が違う
美容師の免許に関する事項は、厚生労働省に備える美容師名簿に登録されます(美容師法第5条)。取消や業務停止など、免許の状態が変わる場面では、免許証を返したり、出したりする手続きが施行規則第7条に定められています。「返納」は免許証を手元から返すこと、「提出」は処分した行政庁に預けることです。
| 場面 | 免許証でやること | 返す・出す先 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 免許の取消処分を受けた | 速やかに返納する | 厚生労働大臣 | 施行規則第7条第2項 |
| 業務の停止処分を受けた | 速やかに提出する | 処分をした都道府県知事、保健所を設置する市の市長、または特別区の区長 | 施行規則第7条第3項 |
| 名簿の登録の消除を申請する | 返納する | 厚生労働大臣 | 施行規則第7条第1項 |
取消と業務停止は、同じ処分でも出し先が違います。取消は国(厚生労働大臣)、業務停止は処分した自治体の長です。処分の種類や基準は美容師の業務停止・免許取消の基準にまとめています。
免許の取消処分を受けたとき(第7条第2項)
美容師法第10条は、免許の取消を次の2つの場合に定めています。
- 第1項: 免許の欠格事由(第3条第2項第1号)に当たるとき、厚生労働大臣が取り消すことができる
- 第3項: 業務停止処分に違反したとき、厚生労働大臣が取り消すことができる
この取消処分を受けた人について、施行規則第7条第2項は、次のように定めています。
2 法第十条第一項又は第三項の規定により免許の取消処分を受けた者は、速やかに、厚生労働大臣に免許証又は免許証明書を返納しなければならない。
「速やかに」とだけ書かれていて、日数の指定は条文にありません。取消の理由になる欠格事由は美容師免許の欠格事由で扱っています。取消のあとに再免許を受けられる場合があることは、第10条第4項に書かれています。
業務の停止処分を受けたとき(第7条第3項)
業務停止は、美容師が第7条(美容所以外での営業)または第8条(衛生措置)に違反したときなどに、都道府県知事が期間を定めて行う処分です(第10条第2項)。この処分を受けた人は、免許証を処分した行政庁へ提出します。
3 法第十条第二項の規定により業務の停止処分を受けた者は、速やかに、処分を行った都道府県知事、地域保健法(昭和二十二年法律第百一号)第五条第一項の規定に基づく政令で定める市(以下「保健所を設置する市」という。)の市長又は特別区の区長に免許証又は免許証明書を提出するものとする。
取消の第2項は「返納しなければならない」、業務停止の第3項は「提出するものとする」と、書き分けられています。提出した免許証が停止期間のあとどうなるかは、この条文には書かれていません。このサイトの一次資料では確認できていないため、書きません。
業務停止の期間中に業務を行うと、第10条第3項により免許の取消の対象になります。美容所の側も、停止処分を受けている人に業務をさせると閉鎖命令の対象です(美容所の立入検査と閉鎖命令)。
名簿の登録の消除を申請するとき(第4条・第7条第1項)
名簿から登録を消すよう申請する手続きです。施行規則第4条は、厚生労働大臣へ様式第三の申請書を出すことを求めています。そして第7条第1項が、そのときの免許証の扱いを定めています。
第七条 美容師は名簿の登録の消除を申請するときは、免許証又は免許証明書を厚生労働大臣に返納しなければならない。第四条第二項の規定により名簿の登録の消除を申請する者についても、同様とする。
後半の「第四条第二項の規定により…申請する者」は、美容師本人が亡くなった場合などの申請者です。第4条第2項は、美容師が死亡または失そうの宣告を受けたとき、戸籍法による届出義務者が30日以内に消除を申請しなければならないと定めています。この場合も、免許証は返納の対象です。
処分は国に通知される(施行令第5条・施行規則第10条)
業務停止の処分をした都道府県知事、保健所を設置する市の市長、特別区の区長は、厚生労働大臣へ通知しなければなりません(施行令第5条)。通知する事項は、施行規則第10条が3つ挙げています。
| 号 | 通知する事項 |
|---|---|
| 1 | 処分を受けた者の登録番号と登録年月日 |
| 2 | 処分を受けた者の氏名、生年月日、住所 |
| 3 | 処分の内容と、処分をした年月日 |
つまり、業務停止の処分は、処分をした自治体だけでなく、名簿を管理する厚生労働大臣にも伝わる仕組みです。
登録の事務を指定登録機関が行う場合の読み替え(施行規則第9条)
施行規則第9条第1項は、美容師の登録の事務を、法第5条の3に基づく指定登録機関が行う場合の読み替えを定めています。第7条第1項(登録消除の申請に伴う返納)と第2項(取消の返納)では、「厚生労働大臣」が「指定登録機関」に読み替えられます。業務停止の提出先を定めた第3項は、この読み替えの対象に挙がっていません。
読み替えのとき、免許証は「免許証明書」と呼び方が変わる箇所もあります。実際にどの機関がどの事務を行っているかは、このサイトの一次資料では確認できていないため、窓口は厚生労働省の案内でご確認ください。
押さえておくこと
- 返す先は、取消と登録消除の申請が厚生労働大臣、業務停止が処分した都道府県知事・市長・区長です。
- 取消は「返納しなければならない」、業務停止は「提出するものとする」と、条文の言い方が違います。どちらも「速やかに」で、日数の指定はありません。
- 返納や提出をしなかった場合の罰則は、美容師法第18条の罰金の項目(無免許営業、届出違反、検査の拒否など)には挙がっていません。ほかの法令による取り扱いは、このサイトでは確認していません。
- 個別の処分や手続きについては、このサイトでは判断しません。処分をした行政庁や所在地の保健所にご確認ください。
罰則の全体は罰則の対応表、ほかの条文の位置づけは条文別早見表で確認できます。
一次情報: 美容師法(昭和32年法律第163号)第5条・第10条・第18条(e-Gov法令検索、2026-10-04取得)、美容師法施行令(昭和32年政令第277号)第5条(e-Gov法令検索、2026-10-04取得)、美容師法施行規則(平成10年厚生省令第7号)第4条・第7条・第9条・第10条(e-Gov法令検索、2026-10-04取得)。条文の引用は原文のとおりです。