参照した公式資料
特定継続的役務の指定に、美容に関わるものは2つある
特定商取引法の「特定継続的役務提供」は、政令で指定された役務を、決められた期間を超えて、決められた金額を超える対価で提供する契約です(法第41条第1項第1号)。指定の対象は、役務の提供を受ける人の「身体の美化又は知識若しくは技能の向上その他のその者の心身又は身上に関する目的を実現させることをもつて誘引が行われる」もので、「目的が実現するかどうかが確実でない」役務とされています(同条第2項)。
消費者庁の「特定商取引法ガイド」は、現在の指定を7役務とし、そのうち美容に関わるのは次の2つです(2026-10-12確認)。
| 役務 | ガイドの記載 | 期間 | 金額 |
|---|---|---|---|
| いわゆるエステティック | 「人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、又は体重を減ずるための施術を行うこと(いわゆる美容医療に該当するものを除く)」 | 1月を超えるもの | 5万円を超えるもの |
| いわゆる美容医療 | 「人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、体重を減じ、又は歯牙を漂白するための医学的処置、手術及びその他の治療を行うこと(美容を目的とするものであって、主務省令で定める方法によるものに限る)」 | 1月を超えるもの | 5万円を超えるもの |
金額は施行令第24条第2項が「五万円」と定め、期間は同条第1項が別表第四に委ねています。ガイドの注では、入学金・受講料・教材費・関連商品の販売を含めた契約金の総額が5万円を超えると対象になるとされています。他の5役務は語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービスで、美容所の施術とは別です。
ヘアカット・パーマ・カラーなど毛髪の施術は、指定の文言に挙がっていない
上の2つの定義には、「皮膚」「体型」「体重」「歯牙」という語はありますが、毛髪の施術(カット、パーマ、カラー、セットなど)は書かれていません。一方で、美容所では脱毛、フェイシャル、ヘッドスパ・頭皮ケア、まつげエクステなど、皮膚や身体に関わる施術も行われます。それらの回数券や月額コースがエステティックの定義に当たるかどうかは、施術の内容、契約の期間と総額、勧誘の仕方によって変わりうる点で、このサイトでは判断しません。契約を結ぶ側、売る側のどちらでも、消費者庁の特定商取引法ガイドの原文か、お住まいの地域の消費生活センターで確かめてください。
各施術を美容師免許で行えるかどうかは別の問題で、施術×職種 境界マップ、脱毛・ピーリング・HIFU、全身美容(エステ)の通知で扱っています。
対象になる契約で定められていること
特定継続的役務提供に当たる契約には、次のような決まりがあります。いずれも、ガイドと条文で確認した内容です。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 契約前後の書面 | 契約の前に概要書面、契約の後に契約書面を渡す。どちらにもクーリング・オフ、中途解約、前受金の保全などの事項を記載する | ガイド(法第42条) |
| 誇大広告の禁止 | 役務の内容などについて、著しく事実に相違する表示や、実際のものよりも著しく優良・有利と誤認させる表示を禁じる | ガイド(法第43条) |
| クーリング・オフ | 法定の書面を受け取った日から8日以内は、書面または電磁的記録で契約を解除できる | ガイド(法第48条) |
| 8日を過ぎた後の中途解約 | 将来に向かって契約を解除できる。解除したとき、損害賠償額の予定や違約金の定めがあっても、事業者が請求できる額には上限がある(提供済みの役務の対価に、政令で定める額を加えた額など) | 法第49条第1項・第2項 |
| 消費者に不利な特約 | これらの規定に反する特約で消費者に不利なものは無効 | 法第49条第7項 |
この章の規定は、契約を結ぶ人が「営業のために又は営業として」結ぶ契約には適用されません(法第50条第1項第1号)。美容所の開設者が自分の店の営業のために役務を買う場合などがこれにあたるかは、契約ごとの判断です。
対象にならない場合でも、キャンセル料には消費者契約法第9条が関わる
消費者契約法の「消費者契約」は、消費者と事業者との間で締結される契約です(第2条第3項)。サロンの予約キャンセル料や回数券の解約時の精算の定めも、個人客との契約であれば、この対象になりえます。第9条第1号は、次の条項を、超える部分について無効とします。
当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの
出典: 消費者契約法(e-Gov法令検索)第9条第1項第1号
同条第2項は、消費者から説明を求められたときは、事業者が違約金の算定の根拠の概要を説明するよう努めることを定めています。何円までのキャンセル料が「平均的な損害」の範囲に収まるかは、このサイトでは示しません。条文には金額の基準が書かれていません。
確認できていないこと
- 美容所のヘアカット・パーマ・カラーの回数券が、特定継続的役務にも当たらないと明記した公的資料。確認した資料に、この点の記述はありませんでした。
- エステティックの中途解約で請求できる額の上限の具体的な金額(施行令別表第四の第3欄・第4欄)。
- 回数券・前払いチケットの有効期限や、未使用分の払い戻しの扱い。確認した資料に、サロンの回数券に特有の定めは見つかっていません。
- 各都道府県の消費生活条例や、業界団体の自主基準。
契約の書き方を確かめる前に
回数券やコースを売る側は、上の表のどちらに近い契約か(施術の種類、期間、総額)を整理したうえで、書面の記載事項を消費者庁のガイドで確かめます。迷うときは、所在地の消費生活センターか、消費者庁の特定商取引法の窓口に相談できます。広告でうたう料金や割引の表示は、別の法律の対象です(美容所の広告の規制)。
よくある質問
美容室の回数券は、特定商取引法の特定継続的役務にあたりますか?
特定継続的役務に指定されている美容関係の役務は、エステティックと美容医療の2つで、どちらも期間は1月を超え、金額は5万円を超えるものです(消費者庁ガイド、2026-10-12確認)。定義文に毛髪の施術は挙がっていません。脱毛やフェイシャルなど皮膚に関わる施術が当たるかは、契約ごとの判断で、このサイトでは判断しません。
予約のキャンセル料に、法律上の上限はありますか?
消費者契約法第9条第1号は、解除に伴う違約金などの合計が、同種の契約の解除で事業者に生じる平均的な損害の額を超える部分を無効とします。具体的な金額の基準は条文にありません。特定継続的役務に当たる契約では、法第49条に別の上限の定めがあります。
回数券の有効期限や、使わなかった分の払い戻しは、法律で決まっていますか?
このページでは確認できていません。確認した資料に、サロンの回数券に特有の有効期限や払い戻しの定めは見つかっていません。特定継続的役務に当たる契約なら中途解約の規定(法第49条)が働きますが、当たるかは契約ごとの判断です。迷うときは消費生活センターに相談できます。
月額定額・通い放題(サブスク)のプランも、同じ見方になりますか?
確認できた範囲では、指定されている美容関係の役務はエステティックと美容医療で、期間が1月を超え金額が5万円を超えるものという条件です。定義文に毛髪の施術は挙がっていないため、カット・パーマ・カラーの通い放題は、この定義文からは読み取れません。月ごとの支払いをどう合計して5万円と比べるかを定めた資料は確認できていないため、このサイトでは判断しません。契約に不安があるときは消費生活センターに相談できます。
回数券を買ったあと、クーリング・オフはできますか?
特定継続的役務提供に当たる契約なら、法定の書面を受け取った日から8日以内は、書面または電磁的記録で契約を解除できます(消費者庁ガイド、法第48条)。ヘアカット・パーマ・カラーの回数券が特定継続的役務にも当たらないと明記した公的資料は確認できていないため、個別の契約で使えるかはこのサイトでは判断しません。
確かめた資料
取得・確認の記録: 特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号)第41条・第48条・第49条・第50条、同施行令(昭和51年政令第295号)第24条・第25条(e-Gov法令検索(法)、同(施行令)、2026-10-12取得)、消費者契約法(平成12年法律第61号)第2条・第9条(e-Gov法令検索、2026-10-12取得)、消費者庁「特定商取引法ガイド 特定継続的役務提供」(no-trouble.caa.go.jp、2026-10-12確認)。施行令別表第四の本文は、e-Gov法令検索の取得結果に含まれておらず、消費者庁ガイドの記載で確認しました。最終確認日: 2026-10-12。
次に読むページ
- 料金の二重価格・初回限定割引・口コミの表示:美容所の広告の規制
- エステ・脱毛と美容師免許:全身美容(エステ)の通知、脱毛・ピーリング・HIFU
- 施術事故のときの責任:施術事故の損害賠償責任と賠償保険の確認先
- キャンセル料や返金をめぐって客から過度な要求を受けたときの事業主の義務:カスタマーハラスメントと美容所の事業主の義務