結論:令和8年10月1日から対応体制づくりが事業主の義務
確認日は2026-10-28です。原文で確かめられたことは次の5点です。
- 東京都カスタマー・ハラスメント防止条例は2025年4月1日に施行されました。都内で事業を行う事業者には、防止への取組や被害を受けた就業者の安全確保などに努めることが定められています。
- 労働施策総合推進法第33条第1項は、事業主に対し、顧客等の言動で労働者の就業環境が害されることのないよう、労働者からの相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備、その言動への対応の実効性を確保するために必要な抑止のための措置その他の雇用管理上必要な措置を講じることを求めています(e-Gov法令検索)。
- 同条第2項は、労働者が相談したこと等を理由に、解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないとしています。
- 厚生労働省の資料(令和8年3月3日の関係省庁連携会議の資料)では、この改正の施行は令和8年10月1日で、指針は令和8年厚生労働省告示第51号です。
- 美容師法の本文には、客の施術を断ってよい場合を定めた条文は見当たりません。
施行日の令和8年10月1日はすでに過ぎているため、従業員を雇う美容所は、相談窓口や対応方針をいつ決めるかではなく、今ある体制で足りるかを確かめる段階です。
義務を負うのは事業主(美容所を雇用して運営する側)で、条文の対象は「その雇用する労働者」です。美容師が自分で客を断ってよいかを直接定めた規定ではありません。
東京都条例と国法の施行日
東京都条例が先に施行され、その後、国の法律で事業主の措置義務が施行されました。公布日と施行日を分けて並べると、現在地は次のとおりです。
| 日付 | 制度の動き | 美容所が確認する点 |
|---|---|---|
| 2024年10月11日 | 東京都カスタマー・ハラスメント防止条例(令和6年東京都条例第140号)を公布 | 都内で事業を行う事業者と、経営者・個人事業主・家族従事者を含む「就業者」も対象に含む条例です。 |
| 2025年4月1日 | 東京都条例を施行 | 都内の事業者には、防止への主体的な取組、就業者の安全確保、行為者への中止の申入れなどに努めることが定められています。 |
| 2025年6月11日 | 労働施策総合推進法等の一部改正法(令和7年法律第63号)を公布 | 事業主が雇用する労働者を守る措置義務を第33条に定めた改正です。 |
| 2026年10月1日 | 労働施策総合推進法第33条を施行 | 相談体制の整備、抑止のための措置など、雇用管理上必要な措置を講じる義務が施行済みです。 |
東京都条例第9条・第14条にある事業者の取組は努力義務、労働施策総合推進法第33条の雇用管理上の措置は義務です。また、東京都条例の「就業者」は個人事業主本人なども含みますが、国法第33条は事業主が「雇用する労働者」の就業環境を守る規定です。従業員のいない一人美容室に国法上の措置義務が同じ形でかかるとは、このページでは判断しません。
労働施策総合推進法第33条の原文
事業主は、職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者(以下「顧客等」)の言動であつて、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、労働者の就業環境を害する当該顧客等言動への対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。(第33条第1項、要点を抜粋)
出典: 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(e-Gov法令検索)第33条
厚生労働省の資料にある「カスタマーハラスメント」の3つの要素
| 要素 | 資料の記載 |
|---|---|
| 1 | 職場において行われる顧客等の言動であること |
| 2 | その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして、社会通念上許容される範囲を超えたものであること |
| 3 | 労働者の就業環境が害されるものであること |
資料は、①から③までの要素を全て満たすものとし、「顧客等からの苦情の全てが該当するわけではなく、客観的にみて、社会通念上許容される範囲で行われたものは、いわば正当な申入れ」で該当しない、とも書いています。対面だけでなく、電話やSNS等のインターネット上のものも含まれます。「顧客等」には、今後サービスを利用する可能性のある人も含まれ、美容所に当てはめると予約の問い合わせをした人にも及びます。
美容師法に、客の施術を断る規定はあるか
美容師法の本文を「拒」の語で検索すると、該当する条は第17条の4と第18条の2条だけで、どちらも立入り・検査を拒む場合の罰則です(第17条の4は指定試験機関・指定登録機関への検査、第18条は美容所への立入検査)。客の施術を断ってよい場合や、断ってはならない場合を定めた条文は、見当たりませんでした(e-Gov法令検索、確認日2026-10-12)。
同僚・上司からの迷惑行為は別の枠組み
カスタマーハラスメントは、客など外部の人の言動です。同僚や上司からの言動は、厚生労働省の資料では、事業主の対策が義務となっているハラスメントのうち、パワーハラスメント(労働施策総合推進法)やセクシュアルハラスメント(男女雇用機会均等法)などとして別に整理されています。このページでは、その内容までは確認していません。従業員どうしの防止措置は美容所内のパワハラ・セクハラの防止措置義務と相談先で整理しています。
このページで確認していないこと
- 指針(令和8年厚生労働省告示第51号)の措置の全文と、美容所のような小規模事業所での具体的な運用。確認したのは厚生労働省の抜粋資料の範囲です。
- 業務委託・面貸しで働く美容師が、この義務の「労働者」に当たるか。労働者かどうかは別ページ(面貸し・業務委託の美容師は労働者か)で扱っています。
- 個別の客の言動が、カスタマーハラスメントに当たるか、施術を断ってよいか。個別の事情によるため判断しません。
- 厚生労働省の企業向けマニュアルの内容(開いていません)。
実際の対応は、勤務先の相談窓口、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に確かめてください。
厚生労働省のリーフレットにある、事業主が講じる措置(10項目)
厚生労働省リーフレット「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます! カスタマーハラスメント対策の義務化」は、「事業主は、以下の措置を必ず講じなければなりません」として、次の10項目を挙げています(確認日2026-10-28)。
- 方針の明確化と周知・啓発: ①カスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化して周知・啓発する、②カスタマーハラスメントの内容とあらかじめ定めた対処の内容を労働者に周知する
- 相談体制の整備: ③相談窓口をあらかじめ定めて周知する、④相談窓口の担当者が適切に対応できるようにする
- 事後の迅速かつ適切な対応: ⑤事実関係を迅速かつ正確に確認する、⑥被害者への配慮の措置を行う、⑦再発防止に向けた措置を講ずる
- 抑止のための措置: ⑧特に悪質と考えられるカスタマーハラスメントへの対処の方針をあらかじめ定めて周知し、対処できる体制を整備する
- 併せて講ずべき措置: ⑨相談者等のプライバシーを保護する措置を講じて周知する、⑩相談したこと等を理由に不利益な取扱いをされない旨を定めて周知・啓発する
②の対処の内容の例として、リーフレットは、管理監督者にその場の対応の方針について指示を仰ぐこと、可能な限り労働者を一人で対応させないこと、犯罪に該当し得る言動は警察へ通報することなどを挙げています。対策を講じるときは、消費者の権利や、障害者差別解消法の不当な差別的取扱いの禁止・合理的配慮の提供義務に留意するよう、あわせて書かれています。
この10項目は厚生労働省の資料の記載です。どの程度の体制があれば足りるかの個別の判断は、このページではしません。
よくある質問
カスタマーハラスメントについて、事業主に法律上の義務はありますか?
労働施策総合推進法第33条第1項が、相談体制の整備や抑止のための措置など、雇用管理上必要な措置を講じることを事業主に求めています。厚生労働省の資料では、施行は令和8年10月1日で、すでに施行されています(確認日2026-10-28)。
客からの苦情は、すべてカスタマーハラスメントになりますか?
厚生労働省の資料は、苦情のすべてが該当するわけではなく、客観的にみて社会通念上許容される範囲のものは正当な申入れで、該当しないとしています。どの場面が該当するかは、このページでは判断しません。
美容師法に、客の施術を断ってよい場合の定めはありますか?
美容師法の本文には、客の施術を断ることを定めた条文は見当たりません(検索で出た「拒」を含む2条は立入り・検査を拒む場合の罰則です)。断ってよいかの個別の判断は、このページではしません。
関連ページ
- 障害のある客への配慮や補助犬の同伴を確かめたいとき:障害のある客への合理的配慮と補助犬の同伴
- 労働者かどうかの判断材料:面貸し・業務委託の美容師は労働者か
- 客の情報の扱い:美容所での客の個人情報の扱い
- 施術事故の責任:施術事故の損害賠償責任と賠償保険の確認先
参照した公式資料
- 東京都カスタマー・ハラスメント防止条例(東京都令規集)
- 東京都「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」
- 東京都「カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針」
- 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(e-Gov法令検索)
- 美容師法(e-Gov法令検索)
- 厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」
- 労働施策総合推進法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(令和8年政令第17号)
- 厚生労働省リーフレット「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます! カスタマーハラスメント対策の義務化」
- 厚生労働省「職場におけるカスタマーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針について」(令和8年3月3日、関係省庁連携会議 資料1)
確認日2026-10-28。東京都カスタマー・ハラスメント防止条例、労働施策総合推進法第33条、施行期日を定める政令と厚生労働省の資料を確認。