結論:防止措置は美容所の規模に関わらず事業主の義務

確認日は2026-10-15です。法令の原文と厚生労働省の資料で確かめられたことは次の4点です。

義務を負うのは事業主(雇用して美容所を運営する側)で、条文の対象は「その雇用する労働者」です。業務委託・面貸しで働く美容師は、労働者に当たるかどうかが別に問題になります。

労働施策総合推進法第31条と男女雇用機会均等法第11条の原文

【労働施策総合推進法第31条第1項】事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

出典: 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(e-Gov法令検索)第31条第1項

【労働施策総合推進法第31条第2項】事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

出典: 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(e-Gov法令検索)第31条第2項

【男女雇用機会均等法第11条第1項】事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

出典: 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(e-Gov法令検索)第11条第1項

どちらの法律も、相談したことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いを禁じています(均等法は第11条第2項)。

パワハラの3つの要素と「優越的な関係」の例(厚生労働省の指針)

要素指針の記載
1優越的な関係を背景とした言動
2業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
3労働者の就業環境が害されるもの

指針は、①から③までの要素を全て満たすものをパワハラとし、「客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない」と書いています。「優越的な関係を背景とした」言動には、例として次のものが挙げられています。

美容所の店長と見習いの関係や、技術を持つ先輩とアシスタントの関係がこの例に当たるかは、個別の事情によるため、このページでは判断しません。

セクハラの範囲(厚生労働省の指針)

セクハラ指針は、職場のセクシュアルハラスメントに、労働者の意に反する性的な言動への対応で労働者が不利益を受けるもの(対価型)と、性的な言動で就業環境が害されるもの(環境型)の2つがあるとしています。同性に対するものも含まれ、被害を受けた人の性的指向やジェンダーアイデンティティにかかわらず対象になります。「職場」には、労働者が通常働いている場所以外でも、業務を遂行する場所(顧客の自宅など)が含まれます。言動を行う人には、事業主、上司、同僚に限らず、取引先、顧客なども含まれると書かれています。

事業主が講じる措置と、中小企業への適用時期

区分厚生労働省の資料の記載
セクハラ等の措置業種・規模に関わらず、すべての事業主の義務
パワハラの措置(中小企業)令和4年4月1日から義務(令和4年3月31日までは努力義務)

厚生労働省の資料にある、セクハラ等について事業主が講じる措置は次の4つです(妊娠・出産等に関するハラスメント向けの5つ目は省略しています)。

  1. 事業主の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること
  2. 相談、苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備すること
  3. 相談があった場合、事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害者と行為者に適正に対処し、再発防止の措置を講ずること
  4. 相談者や行為者のプライバシーを保護し、相談したことなどを理由に不利益な取扱いをしてはならない旨を定めて周知・啓発すること

パワハラ指針も、事業主の方針等の明確化と周知・啓発、相談に応じ適切に対応するための体制の整備、相談があったときの事後の迅速かつ適切な対応を、事業主が講じなければならない措置としています。

「中小企業」に当たる規模(資本金・従業員数の基準)は、このページでは確認していません。厚生労働省のリーフレットで確かめてください。

被害にあったときの相談先(厚生労働省の資料)

  1. 会社の相談窓口(人事労務などの相談担当者や信頼できる上司)。取引先や顧客からのセクハラも、自分の勤める会社に相談する。労働組合に相談する方法もある。
  2. 会社で対応してもらえない場合や社外で相談したいときは、近くの総合労働相談コーナー(匿名でも可、プライバシーは厳守、相談は無料)。
  3. 会社に相談しても対応してもらえなかったときは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)。

小規模な美容所では、相談の窓口が店長や経営者本人になる場合があります。その場合の社内の窓口の置き方は、指針の全文では確認していません。

このページで確認していないこと

よくある質問

美容所の従業員どうしのパワハラ・セクハラについて、事業主に法律上の義務はありますか?

労働施策総合推進法第31条第1項は職場のパワーハラスメントについて、男女雇用機会均等法第11条第1項は職場の性的な言動について、事業主に、相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じることを求めています。厚生労働省の資料では、セクハラの措置は業種・規模に関わらずすべての事業主の義務で、パワハラの措置は中小企業でも令和4年4月1日から義務です(確認日2026-10-15)。

先輩美容師や店長が見習い・アシスタントを厳しく指導することは、すべてパワハラになりますか?

厚生労働省の指針は、パワハラは「優越的な関係を背景とした言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」「労働者の就業環境が害されるもの」の3つを全て満たすものとし、客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は該当しないとしています。個別の言動が該当するかは、このページでは判断しません。

職場のパワハラ・セクハラの相談は、どこにできますか?

厚生労働省の資料は、まず会社の相談窓口、会社で対応してもらえない場合や社外で相談したいときは総合労働相談コーナー(匿名可・相談無料・プライバシー厳守)、会社に相談しても対応してもらえなかったときは都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)としています(確認日2026-10-15)。

パワハラ・セクハラの指針に、美容所や美容師の師弟関係の記述はありますか?

厚生労働省のパワハラ指針(令和2年厚生労働省告示第5号)とセクハラ指針(平成18年厚生労働省告示第615号)の本文に「美容」「理容」の語はなく、美容所や師弟関係を名指しした記述は確認できませんでした(確認日2026-10-15)。美容所にも一般の定めが及ぶかは、労働者に当たるかどうかで決まります。

関連ページ

参照した公式資料

確認日2026-10-15。労働施策総合推進法第31条・男女雇用機会均等法第11条を確認。