先に結論:この記事で確かめたこと

参照した公式資料

美容師法と施行規則には、広告の規定が見当たらない

「ホームページやSNSにビフォーアフター写真を載せてよいか」「美容師免許を持っていることを広告に書いてよいか」といった疑問があります。美容師法(昭和32年法律第163号)と美容師法施行規則(平成10年厚生省令第7号)の本則を、e-Gov法令検索で2026-10-09に「広告」の語で検索したところ、どちらも該当する条は0件でした。美容師法本則は「表示」でも0件でした。つまり、美容所の広告の内容や方法そのものを定める条文は、この2つの法令には見当たりません。

ただし、「美容師法に広告の定めがない」ことは、「どんな広告をしてもよい」ことを意味しません。広告全般に適用される別の法律があります。

広告に関わる主な法令の違い(美容師法・景品表示法・医療法)

下の表は、広告の内容を縛る3つの法令を比べたものです。料金の税込総額表示(消費税法)とステルスマーケティング規制(景品表示法の告示)は、続く「料金の割引表示と口コミ・体験談の掲載」の節で扱います。看板など屋外に出す広告物は、広告の内容ではなく設置場所の規制なので、美容所の看板と屋外広告物条例の許可に分けています。

法令条文に書かれていること美容所の広告との関係
美容師法・同施行規則本則に「広告」を含む条なし(2026-10-09確認)広告の内容を直接定める条文は見当たらない
不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)第5条事業者は、自己の供給する商品・役務の取引について、品質などを実際のものよりも著しく優良であると示す表示、価格などの取引条件を実際のものよりも著しく有利と誤認される表示をしてはならない(第1号・第2号の趣旨)。違反する行為があるときは、内閣総理大臣が差止めなどの措置を命じることができる(第7条)事業者とは「商業、工業、金融業その他の事業を行う者」(第2条第1項)。美容所を営む人が行う広告も、役務(施術)の取引に関する表示として、この条文の文言に当てはまりうる。当てはまるかどうかは個別の表示ごとに判断される
医療法第6条の5「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して」広告をする場合の、虚偽広告の禁止と、広告できる事項の制限条文が対象にしているのは医業・歯科医業・病院・診療所に関する広告。美容所の広告は、条文の文言上は対象に挙がっていない

景品表示法の「著しく優良であると示す表示」に具体的に何が当たるか(たとえば、ビフォーアフター写真の加工や、実際の施術結果と異なる効果の表示)は、条文だけでは決まりません。このサイトでは、消費者庁の運用や具体的な事例を確認できていないため、個別の表示が違反になるかどうかは書きません。

資格・免許の表示について

美容師免許を持っている旨を広告に書くことを禁じたり、書き方を定めたりする条文は、美容師法・施行規則の本則には見当たりません(上記の検索結果)。一方で、美容は免許を持つ美容師が業として行うものです(美容師免許の取得条件)。免許のない人が行う施術は無免許営業の問題になりえます(無免許アシスタントの作業範囲)。広告に書く内容が事実と異なる場合は、景品表示法の「実際のものよりも著しく優良であると示す表示」に当たるかが、条文の文言上は問題になりえます。

料金の割引表示と口コミ・体験談の掲載(消費者庁の資料)

サロンの広告で迷いやすい「通常料金との二重価格」「初回限定の割引・クーポン」「口コミ・体験談の掲載」について、消費者庁が公表している資料の記載を原文で確認しました(2026-10-12)。どの表示が違反になるかは、個別の事案ごとの判断です。このサイトでは判断しません。

二重価格表示・初回限定の割引

消費者庁の「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(平成18年1月4日公正取引委員会、平成28年4月1日消費者庁改定)は、対象を「商品又は役務(サービス)」の価格表示としています。原文には次の記載があります。

表示の種類考え方の原文(抜粋)
二重価格表示(通常料金を併記する)「比較対照価格の内容について適正な表示が行われていない場合には、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがある」(第4の1)
過去の料金を比較対照にする「同一の商品について最近相当期間にわたって販売されていた価格を比較対照価格とする場合には、不当表示に該当するおそれはないと考えられる」。判断の目安として、セール開始時点からさかのぼる8週間のうち、その価格で販売された期間が過半を占めるときは相当期間とみてよいが、その価格での販売が通算2週間未満、または最後の販売日から2週間以上経過している場合は相当期間とはいえないとされる(第4の2)
将来の料金を比較対照にする「将来の価格として表示された価格で販売することが確かな場合(略)以外において、将来の販売価格を用いた二重価格表示を行うことは、適切でないと考えられる」(第4の2)
初回限定など、顧客を限った料金販売価格の表示では「当該価格が適用される顧客の条件について正確に表示する必要」があり、「顧客が限定されているにもかかわらず、その条件を明示しないで、商品の販売価格のみを表示すること」は不当表示に該当するおそれがある表示として挙げられている(第3)

初回限定割引やクーポンの料金も、この考え方の「販売価格」にあたる表示として読めます。美容所の施術料金の個別の表示が当たるかどうかは、消費者庁の考え方の原文と、必要に応じて消費者庁の相談窓口で確かめてください。

メニュー表・Webの料金は税込総額で表示する(消費税法第63条)

料金の表示には、景品表示法のほかに、消費税法第63条の総額表示の義務もあります。国税庁と財務省の資料の記載を原文で確認しました(2026-10-14)。条文は、不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う場合(専ら他の事業者に行う場合を除く)に、あらかじめ役務の価格を表示するときは「消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額を含めた価格を表示しなければならない」と定めています。条文の括弧書きで、消費税を納める義務が免除される事業者は除かれています。自分の事業者区分で義務が生じるかは、税務署や税理士に確かめてください。

確認したい点資料の記載
どの表示が対象か国税庁タックスアンサーNo.6902は、事業者が消費者に対してあらかじめ表示する価格が対象で、「店頭表示、チラシ広告、新聞・テレビの広告など」どのような表示媒体でも問わないとしています。口頭で伝える価格は対象になりません。
税込と認められる書き方国税庁は、「11,000円」「11,000円(税込)」「11,000円(税抜価格10,000円)」「10,000円(税込価格11,000円)」などを、総額表示として認められる例に挙げています(税率10パーセントの場合)。
Webの「料金例」財務省のQ&Aは、見積書・契約書・請求書は対象外としつつ、「広告やホームページなどにおいて、あらかじめ“見積り例”などを示している場合」は、不特定かつ多数の者にあらかじめ価格を表示する場合に当たるとしています。
税抜価格を大きく書く表示財務省のQ&Aは、「9,800円(税込10,780円)」のように税抜価格を本書きにする表示も、直ちに義務に反するものではないとしています。ただし、税抜価格をことさら強調して消費者に誤認を与えると、総額表示の観点で問題が生じうるほか、景品表示法の問題が生じるおそれもあるとしています。
「○円引き」「○割引」財務省のQ&Aは、割引の表示そのものは対象外とし、値引前の価格と値引後の価格は総額表示にする必要があるとしています。
会員制・指名料などの手数料財務省のQ&Aは、会員制でも会員の募集が広く一般に行われていれば対象としています。また、単価や手数料のように、最終的な取引価格そのものではなくても事実上その取引価格を表示しているものは対象としています。

サロンのメニュー表や予約サイトの料金が個別に当たるかどうかは、このサイトでは判断しません。財務省は個別の表示について、義務に反するかだけでなく、消費者からどのように受けとめられるかも踏まえるよう求めています。

口コミ・体験談の掲載(ステルスマーケティング規制)

令和5年10月1日から、景品表示法第5条第3号に基づく告示「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年3月28日内閣府告示第19号)が施行されています。告示の指定内容は「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」です。

消費者庁の運用基準は、事業者の表示になる場合として、事業者が第三者に自らの商品・役務に係る表示を「当該第三者のSNS上や口コミサイト上等に」させる場合を挙げています。明示的な依頼がなくても、事業者が表示内容を決められる程度の関係があり、第三者の自主的な意思による表示とは認められない関係性があるときは、事業者の表示となります。対価は金銭や物品に限らず、イベント招待などの経済上の利益を含みます。

消費者庁の説明では、規制の対象は商品・サービスを供給する事業者(広告主)で、依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は規制の対象とはなりません。個人の感想などの広告でないものも対象外です。

医療行為にあたる施術の広告

アートメイクのように、医師でなければ行えない行為(医師法第17条)にかかわる施術は、広告の前に、その施術を美容所で行えるかどうかが問題になります。アートメイクの根拠通知はアートメイクの合法性、脱毛などの根拠通知は脱毛・ピーリング・HIFUで確認できます。

ヘアケア商品や化粧品の効能をどこまで広告に書けるかを調べるときは、店頭販売の許可の要否と効能表示の範囲を公式資料の原文で整理した美容室でヘアケア商品・化粧品を店頭販売するときの許可の要否と効能表示の範囲もあわせて確認できます。

押さえておくこと

美容所に義務づけられている掲示は美容所の掲示・備え付け、義務の全体像は美容所の義務の早見表、罰則は罰則の対応表にまとめています。

よくある質問

美容師法に、美容所の広告の規制はありますか?

美容師法(昭和32年法律第163号)と施行規則の本則を、e-Gov法令検索で2026-10-09に「広告」の語で検索したところ、どちらも該当する条は0件でした。ただし、広告全般に適用される別の法律はあります。上の表で3つの法令を比べています。

ビフォーアフター写真を載せるとき、どの条文が関わりますか?

景品表示法第5条は、品質などを実際のものよりも著しく優良であると示す表示などを禁じています。美容所を営む人の広告も、条文の文言に当てはまりうるとされますが、個別の表示が当たるかどうかは表示ごとの判断で、このサイトでは判断しません。消費者庁や所在地の保健所にご確認ください。

美容室の「通常料金」との二重価格や、初回限定割引は景品表示法で規制されますか?

消費者庁の「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」は、商品又は役務(サービス)の価格表示を対象にしています。比較対照にする通常料金が、最近相当期間にわたって実際に販売されていた価格でない場合や、初回限定などの条件を明示しない場合は、不当表示に該当するおそれがあるとされています。個別の表示が当たるかどうかはこのサイトでは判断しません(確認日: 2026-10-12)。

美容室のメニュー表やホームページの料金は、税抜でもよいですか?

消費税法第63条は、不特定かつ多数の者に役務を提供する事業者があらかじめ価格を表示するときは、消費税額と地方消費税額を含めた価格を表示しなければならないと定めています(消費税を納める義務が免除される事業者は括弧書きで除かれています)。国税庁は、店頭・チラシ・広告など表示媒体を問わないとしています。財務省のQ&Aは、ホームページ上の見積り例も対象になるとしています。個別の表示が当たるかどうかはこのサイトでは判断しません(確認日: 2026-10-14)。

お客様の口コミを、美容室の投稿として載せるとき、ステルスマーケティング規制は関係しますか?

令和5年10月1日から、景品表示法第5条第3号に基づく告示により、事業者の表示であることを一般消費者が判別することが困難な表示が規制されています。事業者が第三者にSNSや口コミサイトで自らの役務に係る表示をさせる場合は、明示的な依頼がなくても事業者の表示になりえます。個別の投稿が当たるかどうかは、このページの口コミの節で消費者庁の運用基準の範囲を確認してください。

医療法の広告規制は、美容所にも適用されますか?

医療法第6条の5が対象にしているのは、医業・歯科医業・病院・診療所に関する広告です。美容所の広告は、条文の文言上は対象に挙がっていません。アートメイクのような医行為にかかわる施術は、広告の前に、美容所で行えるかが問題になります(アートメイクの合法性)。

取得・確認の記録: 美容師法(昭和32年法律第163号、e-Gov法令検索)、美容師法施行規則(平成10年厚生省令第7号、e-Gov法令検索)、不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第2条・第5条・第7条(e-Gov法令検索)、医療法(昭和23年法律第205号)第6条の5(e-Gov法令検索)。消費者庁「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(PDF)、内閣府告示第19号(PDF)、同告示の運用基準(PDF)、消費者庁「ステルスマーケティング」(解説ページ)は2026-10-12に原文を確認。いずれも2026-10-09取得、2026-10-10に原文と再照合(「広告」「表示」の語の検索結果0件も同日再確認)。最終確認日: 2026-10-14。総額表示は、消費税法(昭和63年法律第108号)第63条(e-Gov法令検索)、国税庁タックスアンサーNo.6902「「総額表示」の義務付け」(令和8年4月1日現在法令等)と同ページのQ&A、財務省「総額表示に関する主な質問」を2026-10-14に原文で確認。

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