結論:残業には36協定の届出が必要で、割増は25%以上

確認日は2026-10-14です。労働基準法・同施行規則・政令の原文(e-Gov法令検索)と、厚生労働省の労働局ページで確かめられたことは次の5点です。美容所に限った規定は、確認した条文・資料にはありません。以下は美容所を含む全業種に共通する内容です。

閉店後のカット・カラーの練習が労働時間に当たるかは別の論点で、営業時間外の練習と労働時間のページで整理しています。このページは、残業を命じるときの手続きと賃金に絞っています。

36協定の要件と届出先

項目原文の記載
協定の相手方と届出「労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては」、協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる(第36条第1項)
届出の様式と届出先「様式第九号…により、所轄労働基準監督署長にしなければならない」(施行規則第16条第1項)。更新するときは、その旨の協定を届け出ることで届出に代えられる(同条第3項)
協定で定める事項労働者の範囲、対象期間(1年間に限る)、延長・休日労働ができる場合、1日・1か月・1年それぞれの延長時間または休日の日数、そのほか省令で定める事項(第36条第2項)
時間外労働の限度「一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間」(第36条第4項)
臨時的に限度を超える場合(特別条項)通常予見できない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超える必要がある場合に限り、1年について720時間を超えない範囲で定められる(第36条第5項)。時間外労働と休日労働の合計は、1か月100時間未満、対象期間の2か月から6か月の平均が各80時間以内(同条第6項第2号・第3号)
罰則第37条(割増賃金)と第36条第6項に違反した者は、6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金(第119条第1号)

労働時間の上限と休日の関係では、第35条が「毎週少くとも一回の休日」(または4週間を通じ4日以上の休日)を求めています。36協定がなくても、使用者が時間外・休日に働かせれば第32条・第35条の違反になり得る、という構造です。

割増賃金の率と、割増の基礎になる賃金

区分割増率根拠
時間外労働(法定の1日8時間・1週40時間を超える分)25%以上第37条第1項、政令(平成6年政令第5号)「延長した労働時間の労働については二割五分」
休日労働35%以上同政令「休日の労働については三割五分」
1か月60時間を超える時間外労働の、超えた分50%以上第37条第1項ただし書。中小企業への適用は令和5年(2023年)4月1日から(北海道労働局の案内)
深夜労働(午後10時から午前5時)25%以上第37条第4項

割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当のほか、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金は算入しません(第37条第5項、施行規則第21条)。60時間超の割増賃金の支払いに代えて、労使協定により通常の賃金が支払われる休暇を与える方法もあります(第37条第3項)。

割増賃金の計算例(時給1,500円と仮定)

計算の式は「1時間あたりの賃金 × (1+割増率) × 時間数」です。割増率は上の表の率(第37条)で、時間外または休日の労働が午後10時から午前5時に及ぶ部分は、時間外+深夜で50%以上、休日+深夜で60%以上です(施行規則第20条、確認日2026-10-15)。時給1,500円は計算を見せるための仮定で、実際の賃金額を示すものではありません。割増の基礎になる賃金は手当の扱いで変わります(上記)。

例(仮定)適用する割増率計算支払額
1か月の時間外が60時間以内で、午後10時前に3時間残業25%以上(時間外)1,500円 × 1.25 × 3時間5,625円
時間外の2時間が午後10時から12時に及ぶ50%以上(時間外25%+深夜25%)1,500円 × 1.50 × 2時間4,500円
法定休日に8時間働き、深夜には及ばない35%以上(休日)1,500円 × 1.35 × 8時間16,200円
1か月の時間外が60時間を超えた分の4時間(深夜ではない)50%以上(60時間超)1,500円 × 1.50 × 4時間9,000円

表の割増率は法令が定める最低限度です。就業規則や雇用契約でこれより高い率を定めている場合は、その率で計算します。月給制の場合に1時間あたりの賃金をどう出すかは、施行規則第19条が定めています。このページでは扱っておらず、未確認として扱います。

理容師の残業手当も同じ労働基準法で決まる

労働基準法の別表第一は、同法が対象とする事業を15号に分けて並べた表です(2026-10-27にe-Govで確認)。第8号は「物品の販売、配給、保管若しくは賃貸又は理容の事業」で、理容の事業が名前で入っています。割増賃金を定める第37条は、この表の事業ごとに率を変えていません。上の表の25%以上・35%以上・50%以上は、理容所で働く理容師にも同じ条文から当てはまります。

別表第一には「美容」という語は出てきません。美容所の事業がどの号に当たるかは、表の文言からは読み取れず、ここでは判断しません。

確認できたことと、できていないこと

論点状態根拠
36協定の届出先・限度時間・特別条項の上限確認できた労働基準法第36条、施行規則第16条(e-Gov)
割増率(時間外25%・休日35%・深夜25%・60時間超50%)確認できた第37条、政令、北海道労働局ページ
美容業に限った割増賃金・36協定の特例未確認(確認した条文・資料に美容業の規定はない)本文は全業種共通の記載
管理監督者や、固定残業代を支払う場合の扱い未確認(このページでは扱わない)今回確認した条文・資料の対象外
個別のサロンの残業時間・賃金が適法か判断しない協定の内容と実際の勤務実態で決まるため。労働基準監督署に相談できる

参照した公式資料

確認日2026-10-14。条文はe-Govから、政令は本文を原文で確認しました。このページは一般的な制度の整理で、個別の事案の適否を示すものではありません。

関連ページ

よくある質問

美容室でも、閉店後の残業を命じるには36協定が必要ですか?

労働基準法第36条第1項は、第32条の労働時間を超えて働かせたり休日に働かせたりするには、過半数組合または過半数代表者との書面による協定を結んで行政官庁に届け出ることを求めています。美容業に限った例外は、確認した条文にはありません。

36協定の届出先はどこですか?

施行規則第16条第1項は、様式第九号により、所轄労働基準監督署長に届け出るとしています。更新するときは、その旨の協定を届け出ることで届出に代えられます(同条第3項)。

残業代の割増率は何%ですか?

時間外労働は25%以上、休日労働は35%以上、午後10時から午前5時の深夜労働は25%以上です。時間外労働が1か月60時間を超えた分は50%以上で、中小企業にも令和5年(2023年)4月1日から適用されています。