眉毛の施術は「美容」か:国の回答1件と自治体2件
美容師法第2条第1項は、「美容」を「パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすることをいう」と定めています。第6条は「美容師でなければ、美容を業としてはならない。」です。眉毛の施術がこれに当たるかについて、本サイトが原文で確かめられた根拠は、次の3件です。
| 根拠 | 眉毛について書かれていること | 性質 |
|---|---|---|
| 厚生労働省「新事業活動に関する確認の求めに対する回答」(令和7年7月16日回答) | パーマ技術を応用したアイブロウ施術(眉毛への化粧品の塗布、ワックス脱毛、眉のメイクアップ)は「美容」に該当し、美容師でなければ業として行えないと考えられる | 国の回答(個別の事業計画への回答) |
| 大阪府の公式ページ「眉毛への美容行為には美容所の開設届出が必要です!」 | 眉毛に対する美容行為を業として行う場合、美容所の開設届出が必要 | 自治体の取扱い |
| さいたま市の公式ページ「無資格での美容行為にご注意ください」 | まゆ毛のカット、脱毛、カラー、まゆ毛メイク、アイブロウ等を、美容師免許が必要な美容行為の例に挙げている | 自治体の取扱い |
眉毛だけを名指しして「美容」と定めた法令や、厚生労働省の一般向けの通知は、本サイトでは確認できていません。国の回答は個別の事業計画に対するもので、自治体の2ページはそれぞれの運用の説明です。この点を区別して、以下に原文の内容を整理します。
厚生労働省の回答(令和7年7月16日):アイブロウ施術は「美容」に該当する
照会したのは、化粧品の洗い流すヘアセット料(化粧品パーマ液)を使い、パーマネント技術を応用したアイブロウ施術を行う事業者です。確認の求めは令和7年6月17日、回答は令和7年7月16日で、事業者が美容師以外の者でも業として行えるかを尋ねています。
照会された施術の工程は、次の7段階でした(回答文書の記載)。
- カウンセリング
- 眉毛の形を固めるジェルの塗布
- A剤の塗布(ラップをして10分〜15分放置)
- B剤の塗布(10〜15分放置した後、コットンでふき取り)
- ワックス脱毛(余分な眉毛をワックスで脱毛し、形を整える)
- 眉のメイクアップ
- アフターカウンセリングと会計
この施術では眉毛のカットは行わず、長すぎる眉毛は利用者が事前に自分で切ってくることが想定されていました。回答は次のとおりです。
美容師法第2条第1項の規定において、「美容」とは、「パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすることをいう」とされており、通常、首から上の容姿を美しくすることと解されているところである。
ご照会のアイブロウ施術については、眉毛に化粧品を塗布し、ワックスで脱毛を行った上で、眉毛にメイクアップを行うことにより首から上の容姿を美しくするものであり、同法第2条第1項の「美容」に該当することから、同法第6条に規定されているとおり、美容師でなければ、これを業として行うことはできないと考えられる。
回答の理由は、「首から上の容姿を美しくする」ものだからという一点です。「首から上の容姿を美しくすること」という読み方は、平成20年3月7日の健衛発第0307001号にも出てきます(さいたま市の説明による)。
注意点が2つあります。1つ目に、回答が判断したのは、化粧品の塗布・ワックス脱毛・メイクアップを組み合わせた施術の全体です。ワックス脱毛の1工程だけを取り出して「美容」と述べた文ではありません。2つ目に、この回答は個別の事業計画への回答であり、他の施術にそのまま当てはまると本サイトが断定することはできません。
大阪府:「美容師免許不要」とする講座の説明に注意を促している
大阪府の公式ページは、眉毛への施術の講座・講習を実施する事業者が「美容師免許不要で開業できます」と説明している事例が報告されている、と書いています。そのうえで、眉毛に対する美容行為(容姿を美しくすることを目的として行う施術)を業として行う場合は、美容所の開設届出が必要としています。施術の前に保健所へ相談することも求めています。
美容師免許を持たない人が美容行為を行った場合や、保健所へ開設届出をせずに行った場合は、美容師法上の違反行為になる、とも書かれています。美容所の開設届出の中身は美容所の開設の届出、違反した場合の罰則の条文は罰則の対応表で確認できます。
さいたま市:ワックスやカットを美容師免許が必要な行為の例に挙げている
さいたま市の公式ページは、「アイブロウは美容師免許がなくとも施術可能」「薬剤やワックスを用いてまゆ毛を整える行為は美容師免許不要」などと称するホームページ等が見られる、としています。市は、これらの行為も美容師免許が必要な美容行為と判断している、という立場です。ページには、美容師免許が必要な行為の例として、次の記載があります。
- まゆ毛のカット、脱毛、カラー、まゆ毛メイク、アイブロウ等
- 薬剤・ワックス・テープ・器具・手指等を用いたまつ毛やまゆ毛の施術、形状を整える行為等
同じページの注記には、美容師であっても、レーザー脱毛など医療行為に当たる施術は行えない、という一文もあります。眉毛の周辺でも、皮膚に色素を入れる行為(アートメイク)は別の整理です。大阪府のページも、アートメイクは令和5年7月3日医政医発0703第5号の通知を参照するよう案内しています。
業界団体が「対象外にしてほしい」と求めた経緯(平成23年12月)
平成23年12月14日の厚生労働省「生活衛生関係営業等衛生問題検討会」の議事録には、まつ毛エクステンションの規制のあり方を議論する中で、業界側からの要望が載っています。要望の中で、美容師法による規制になじまないと考えるサービスの例として、「眉毛をはさみや脱毛処理などによりきれいに整えるアイブロースタイリング」が挙げられています。同じ議事録には、保健所の対応がばらばらなので国から指導してほしい、という発言もあります。
この議事録は「そう要望された」ことを示すもので、要望が認められた記録ではありません。本サイトが確認した範囲では、その後の令和7年の回答は、ワックス脱毛を含むアイブロウ施術を「美容」に当たるとしています。
整理:確認できたことと、確認できていないこと
| 施術 | 確認できたこと | 確認できていないこと |
|---|---|---|
| パーマ液を使ったアイブロウ施術(ワックス脱毛・メイクを含む) | 国の回答は「美容」に該当し、美容師でなければ業として行えないと考えられるとした(令和7年7月16日) | 他の施術の組み合わせへの当てはめ |
| 眉ワックス脱毛 | さいたま市が免許必要な行為の例に挙げている。大阪府は眉毛への美容行為に美容所の開設届出が必要としている | ワックス脱毛だけを取り上げた国の見解 |
| 眉カット・カラー・メイク | さいたま市が免許必要な行為の例に挙げている | 国の通知による名指し。眉カットが理容師の業務でもあるかどうか |
| 眉へのアートメイク | 針で色素を入れる行為は、医師免許を有しない者が行えないものとして別の通知がある(アートメイクの合法性) | 美容師免許の範囲との関係は、この表の対象外 |
実務上のポイント
- 眉毛の施術を業として行う場合、自治体は美容行為として扱っています。美容師免許を持つ人が行う場合でも、場所は美容所(届出済みの施設)であることが前提です。美容所の外で行える範囲は出張・訪問美容の対象範囲で確認できます。
- 「美容師免許不要」と案内する講座の資格や認定は、美容師免許の代わりになるものではありません。さいたま市のページにも、民間業者等が独自に認定している資格等についての注記があります。
- 眉カットをはさみやレザーで行う場合の理容師・美容師の線引きは、本サイトでは確認できていません。理容と美容の業務の違いは理容師と美容師の業務範囲で整理しています。
- 他の周辺施術との位置づけは施術×職種 境界マップ、顔そりの扱いは美容師の顔そり、まつ毛はまつげエクステンションの合法性で確認できます。
- 自分の施術が当たるかどうかの判断は、本サイトでは行いません。開業地を管轄する保健所へご確認ください。
よくある質問
眉毛のワックス脱毛やアイブロウ施術に美容師免許は必要ですか?
厚生労働省は令和7年7月16日の回答で、眉毛に化粧品を塗布し、ワックスで脱毛し、メイクアップを行うアイブロウ施術を美容師法第2条第1項の「美容」に該当するとし、美容師でなければ業として行えないと考えられるとしました。さいたま市と大阪府も、眉毛の施術を美容行為として扱っています。個別の施術が当たるかの判断は本サイトでは行いません。
眉ワックスだけの施術について、国の見解はありますか?
本サイトが確認した範囲では、ワックス脱毛だけを取り上げた国の見解は見つかっていません。令和7年の回答は、化粧品の塗布・ワックス脱毛・メイクアップを組み合わせた施術の全体について述べたものです。さいたま市は、ワックスを用いてまゆ毛を整える行為を、美容師免許が必要な行為の例に挙げています。
「美容師免許不要」とうたう眉毛施術の講座で開業できますか?
大阪府は、眉毛施術の講座で「美容師免許不要で開業できます」と説明される事例があるとして、眉毛に対する美容行為を業として行う場合は美容所の開設届出が必要と案内しています。免許を持たずに行った場合や届出をせずに行った場合は、美容師法上の違反行為になると書かれています。
一次情報: 厚生労働省「新事業活動に関する確認の求めに対する回答の内容の公表」(令和7年7月16日回答、https://www.mhlw.go.jp/content/001518002.pdf)、厚生労働省「平成23年度第4回生活衛生関係営業等衛生問題検討会議事録」(平成23年12月14日)、大阪府「眉毛への美容行為には美容所の開設届出が必要です!」、さいたま市「無資格での美容行為にご注意ください(まつ毛・まゆ毛の施術)」。原文を直接取得・確認(確認日2026-10-09)。詳細な出典URLはdocs/SOURCE_LEDGER.md参照。
次に読むページ
- 施術ごとの境界を一覧で見たいとき:施術×職種 境界マップ
- 針で色素を入れる行為を確かめたいとき:アートメイクの合法性
- 通知の発出日・番号を確かめたいとき:美容師の施術に関する厚労省通知の一覧